妖美 -FEMME FATALE-

Duration : 12:00 - 19:00 (月曜休)

Opening : 2020.9.5(土)- 2020.10.18(日)

Venue : 東京都港区台場2-2-4 クリニックモール3階

Tel : +81 (0) 3-6426-0726

Web : https://shunartdesign.com/

Artist : 張海君 |ZHANG Haijun

皮開肉綻(皮が破れ肉が裂ける)中でのエレガントな共鳴

張海君の絵画は3つの言葉で形容できる:エレガント、ブルーミング、共鳴。

  • エレガント

絵画芸術は、つねに技と芸の結合体である。技がなければ、芸術家の個体的な思想がどれほど豊富で充実していても、自己表現に必要な言葉を維持することができない。逆に、技術だけを持っている芸術家は、最後に抜け殻になり、歩き回る死体のようになる。それに対して、張海君の作品は、疑いなく技と芸を統合させ、高度な技術とエレガントさが共存している。

  • ブルーミング

彼のすべての作品には、不確定的な「破綻」と、赤裸々に引き裂かれた痕跡が残されている。「ある画布の器官」という作品では、画面の四隅にそういった遊び心ががあり、それは彼が自分自身の絵画空間をコントロールする事への自信と掌握の表れである。一方、画面に描かれている流れる水のような「放浪」な形態は、芸術家が絵画的言語を精確に描写する力があるという有力な証拠である。

  • 共鳴

張海君の絵画には、強い呼び鳴く力が宿っている。この力は、万語千言の洗礼を受けて残された彼自分の本音である。このリズムは次から次へと発生して、心の中に反響を巻き起こす。これは伝統絵画芸術への警鐘・反省と思想と覚悟を表現している。

 

――恵書文

複雑な心境のもとに

東京のギャラリーを開設して以来三回目になる企画展。今回もオープニングは厳しいので、中止としなければならないと思う。東京のコロナ感染者数がまだ200人以上あるからだ。

昨日は安倍首相が辞任を表明した。画廊の展示会現場にもあまり積極的には人を呼べないまま、粛々と仕事を続けている。

9月の展示会に、中国北の街瀋陽にある魯迅美術大学で教えている現代作家二人の個展を開催する運びになった。昨年冬に瀋陽に出張した際に訪れたアトリエで見た作品達が頭の中を掠めたからである。

魯迅美術大学は中国8大美術大学の一つで、伝統ある少し引き締まった画面で優秀なアーテイストを世に送り出している。

于艾君氏は、北京のアートギャラリーで数多くの展示会に出品しているだけでなく、2年前にはバーゼル香港で個展を開催するほどの実力の持ち主だ。詩人でもある彼の芸術言語は鋭くてエッジが効いていて、版画のイメージを彷彿とさせてくれるが、それを超越したシュールさがカッコいい。素材は日常的な紙、布、方眼紙、新聞紙等多様である。ダイナミックなアイデイアに負けない柔軟な心、感受性豊かな画面は吹き出るアイデイアを確実な筆致で受け取るアンテナを張り続けた結果であろう。複雑な社会で生きる我々の多様な人間模様とある「モノ」が描かれている。今回は海外から輸送するのに限界があったので、比較的に小さめの作品と布のインスタレーションのように掛けて設置できる作品を送っていただいた。

古い重工業基地だった瀋陽の古い研究所や工場で使っていた指示書や設計図っぽい古い紙を素材に、ビビッドなピンクやブルーの色鉛筆を使った作品、形があるものや抽象的な形式のものもある。なんとも分類しがたいが、ビビッと心に突き刺さるものがある。大きな白い布に黒い色調に書いた作品、無雑作に描き下ろした人やモノ、それは時空を超えて今ではなく、遥かなるミライの模様に見える。そして、何十年前に重工業の現場で使われていた紙は彼の親の青春のメモリーとして残り、時間と空間が作品の中で巡り会うのである。

張海君氏の作品は、長い大変な修練を経た怪しい美しさを表現していると言う。実は大きさが2メーター以上の大作が展示会の構成に含まれていたが、やはり運送の問題もあるので、もう少し小さい作品の構成に変更になった。
ゴージャスな妖しさ、そこには現実にはなさそうなシュールな崇高ささえ漂い、近づきがたい。そして、頭から離れない眩惑的な色と形、それを見て何を想像するかは観る者の自由なのである。そして、そこで作品は一層妖しさを増す。

繊細な錯覚に囚われそうな、敏感な画面。その作家本人もまた繊細な精緻な方だ。細かいこと一つにも妥協を許さないこだわり、その本人そのものが作品にも表れている。

今回の、東京画廊で二つの空間を一部屋ずつ使う企画展。二人とも東京初個展だ。

作品が空間に掛けられた品位を想像してみる。やはり楽しい作業ではある。

作品は「場」を作る。其の「場の空気」は生きている。

Shun
Tokyoにて